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俺がそういう人間だってことは小さいころから理解してたんだ。だから意識して避けてた。そうしないと、いつか間違ってしまうと思ったから。
あの日、人通りの少ない道で轢かれた猫が死にかけてて、目は開いてて呼吸もしてるのに、でも血がたくさん出てて、それでも生きてて、今この猫の首を軽く、握って、少し…少しだけ、力を少しだけ入れるだけで殺せるんだって…どのみち助からないんだ、自分が故意にやったって放っておいたって同じだって…俺の中でそういう言葉が溢れて、おかしくなりそうだった、そんな、そんな事は絶対にしてはいけないし、してしまったら…きっと二度と歯止めがきかなくなる。無我夢中で…気が付いたら左目を潰していた。痛みで頭が水を打ったように静まった。俺は殺さずに済んだ。…それでもあの猫は死んでしまっただろうけど。
結局…死ぬ間際に思うのはそんな事ばっかりだった。俺は本当にどうしようもない人間で、誰かを傷つける前に死んでしまったほうが、正解だったんだ。朦朧とした頭で、最後の最後に感じたのは、安堵だった。
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