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「お大事にどうぞ」
そう受付の女性から声をかけられ、僕は心療内科のビルを出る。
不眠症と診断され、心療内科の受診を勧められ、それからどれくらい経っただろう。
あれからだ。あれから全てが駄目になってしまった。
受験に失敗した。母も父も、毎日努力して勉強していた僕なら大丈夫だろうって。そう優しく言ってくれたのに。
母は第一志望に受かるまで勉強を続けなさいって。父は僕に興味を無くしたように冷たくなった。
僕はいつだって最善を求めて、努力していたのに。
努力すれば報われる。実際僕は報われてきた。
過信しきっていたのかもしれない。僕は今まで足掻くだけ足掻いてようやくその先に手が届いていただけだった。
そう思うと全てが馬鹿馬鹿しくて、ただただ虚しくて、毎日部屋に籠もってはベッドの上でうずくまっている。
勉強を続けろと言った母は毎日説教ばかり。
父は食卓で目も合わせない。
虚ろな日々。海の見える坂道を下っているとふいにカモメの群れが頭上を飛んでいく。
空を見上げる。青空に陽光をきらめかせながら鳥が舞っている。
「はは、」
ふいに笑みが漏れる。いつの間にか足は堤防の上に向かい進んでいた。上を向いたまま、鳥たちを追うように、そうして視界がぐるり、と不明瞭になり、僕は…
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